2018年度

日ごとに暖かくなり、桜の開花が気になる季節になってまいりました。 皆様の暖かいご支援の中、キャロルの2018年度も無事に終了することができました。

思い返せば、2018年度は昨年3月に烏山ホールで行った「全体発表会」の余韻が残るなかスタートしました。 生徒さんは発表会で観た自分より上のクラスのリトミックにとても刺激を受けていて、「あれやりたい!」「もう一度やりたい!」等、まだ興奮が冷めぬご様子でした。私たち講師もそれを聞き、とても嬉しく思ったのを覚えています。

それからの2018年度をこちらでご報告させて頂きます。

2018年度のキャロル


8月24日…「打楽器講座」

打楽器講座は、今回が初の取り組みです。特別講師には、打楽器奏者の杉山智恵子(すぎやまちえこ)先生をお迎えしました。

智恵子先生は、東京藝術大学音楽学部器楽科を卒業後、東京藝術大学をはじめ各所にて講師を務めておられます。全日本吹奏楽コンクール審査員、東京吹奏楽団の団員でもあ り、打楽器奏者・マリンバ奏者として多くのコンサート・レコーディングに参加されている、打楽器のプロフェッショナルです。

間近でプロの技を教えて頂ける貴重な機会ですので、講座には保護者の皆様にもご参加いただきました。いつも使っているキャロルの打楽器が、先生の手にかかると魔法にかかったかのように素敵な音色に変わります。

先生は、打楽器は「色」なんだとおっしゃいます。「叩けば音が出る楽器だからこそ、どんな音を鳴らすのかによって全てが変わってしまう」と。

講座中は、私たちリトミック講師のピアノと打楽器でセッションしたり、演奏に合わせて動いたりと、いつものリトミックレッスンのように打楽器を楽しみました。

何よりそこに智恵子先生のパーカッションが加わるだけで本格的な香りが漂うのですから、こんなに楽しい体験はありませんでした。また是非いらしていただきたいです!


12月2日…「クリスマスコンサート」

「アンサンブル・ピアリ」の皆さんによる木管5重奏のコンサートが開催されました。
フルート・オー ボエ・クラリネット・ホルン・ファゴットの楽器を間近で見て、その柔らかい響きに酔いしれました。

ピアリの皆さんをキャロルにお呼びしたのは2回目です。前回大好評でしたので、海外にいるメンバーも含め何とかスケジュールを調整しての開催となりました。

キャロルのコンサートは参加型で、リトミックを通じて体験した音楽をピアノ以外の楽器で体験するというコンセプトで行っています。今回は2つの違うビート( )の聴き分けをテーマにしていて、 ピアリの皆さんと打ち合わせを重ね、レッスンでもさり気なくそれを体験しておきました。

当日は「聖しこの夜」の楽曲でビートを変えてガラリとイメージが変わるのを楽しみました。小さなお子様もノリノリでビートをとる様子に、メンバーの方も驚き「リトミックをしているお子さんは凄いですね!! こんなにすぐ反応できるなんて!!」と改めて感心されていました。

アンコールは会場全員が、ガーシュウイン「I got rhythm」で大盛り上がり!寒い時期のコンサートですが、今回も心がほっかほかになりました。


2月3日…「親子ふれあいコンサート」

1・2歳児対象の親子ふれあいコンサートを開催しました。いつもキャンセル待ちが出てしまう人気のコンサートです。

もう恒例となっているゲストの竹田えりさんのリードで、歌ったり手遊びしたり、踊ったり、パネルシアターを見たり、私たちリトミック講師とリトミックも楽しみました。

えりさんの絶妙なトークで、コンサートでは子どもたちだけでなく、パパやママも笑いっぱなし!次から次へと楽しい事の連続でした。

ちいさなお子様を囲むご家族の幸せな様子に、私たちも癒され た素敵な時間でした。

3月21日…「作品発表会」

Dクラス1年生・Fクラス3年生・研究科4年生による、作曲・創作活動の発表会を行いました。
キャロルでは、リトミックで培ったものをアウトプットする為に創作活動に力を入れています。1年生はメロディー作曲・3年生は和声付作曲を発表しました。そして4年生は、「表現」として自分たちで、 音楽・動き・演出をプロデュースした作品を発表しました。学芸会の演目とは違い、即興でその場で表現していきます。これは初の試みです。

いつも思う事ですが、リトミックをしているお子さんは、本番に強いです。最高の演奏とパフォーマンスに、私達も感動してしまいました。

子どもたちの本気の姿勢、個性溢れるお互いの作品を真剣に聴き合う姿、クラス全体で全身でアンサンブルする様子、全てがリトミックをしてきた結果、自然に身に付いた事だと思います。そんな子ども達を誇りに思えた1日となりました。

 

リトミック a la carte vol.27

リトミックの創始者であるダルクローズ(1865~1950)とは、一体どんな人だったのでしょうか?どんなふうにリトミックを語っていたのでしょうか?

あるリトミック講習会で、ラジオでダルクローズがリトミックについて喋っていた内容を知りました。 文献以外でダルクローズの言葉を知るのがとても新鮮に感じられたので、ここでご紹介します。

私が推奨する教育とは  エミール ジャック=ダルクローズ

(スイス ロマンド放送より 1943~1944)
訳・井上恵理先生

私が推奨する教育(リトミック)とは、一言でいうと、精神と身体、意志と能力、思考と実行とのあいだに親密なコミュニケ―ションをつくりあげることです。本能を持つ肉体の色々な部分間に、生きいきとした流れをつくりあげることです。

ピアニストやバイオリニストを目指す人は長い時間をかけて音楽の学習をします。私が思うには、その時間のいくらかを、“真の音楽家”になるために、使えないかということです。つまり、技術、評価する力、感情と自己コントロールをかねそなえた音楽家にです。

そのとおり!私達の(リトミック)プログラムは様々な側面をもっています。まずは、身体のいろいろな部分を解放し、それぞれの行動に適したリズムを与えることです。それから、その様々なリズム を調和させることです。筋肉感覚と神経感覚が対立することなく、調和し、動きを自由に連動させたり分解させたりできるようになることです。様々なレベルで力とダイナミズムを経験し、生命の源となる力を秩序立てることです。

まずは認識し、そして探求し、其々の行動が無意識のレベルでも実行できるような習慣的動作をつ くりあげることです。習慣的動作には、好ましくない悪いものもあります。そういったものは好ましい良い習慣動作に変えなければいけません。自分の生命体の器官が創り出す全ての行動を、私達自身が管理しなければならないのです。私達ができることは沢山あります! 。。。ただ、多くはそれをしていないだけなのです。自分自身の力を知らない人、さらには、評価しない人が多いのです。

行動に対する自分の意志と可能性、つまり「したいこと」と「できること」の両者のバランスをつくりあげましょう。コミュニケーションをつくりましょう。いっぽうで「無」が生み出す美点にも気付いてください。つまり行動を中断できる事、タイミングをつかんでまた再開できることです。

異なった身体部分に、統一感を持たせることも必要です。よく見てください。よく聴いてください。近くから、遠くから、薄暗がりのような闇のなかでもです。ゆっくりと、またははやく。フォルテで、 またはピアノで。クレッシェンドで、またはデクレッシェンドで。感覚が生み出すリズムの記憶をもってください。有害な行動は排除し、有効なものにつくり替え、悪い習慣は良い習慣にかえることです。

みなさん、いかがでしょうか?このようなことが、若者や成人にむけられたプログラムです。小さなこどもたちに対しても、同様の目的を持ちます。ただし、その方法はこどもの精神と肉体に適したやり方をとらなければなりません。こどもたちのファンタジーを呼び起こし、こどもたち自身の積み上げられていく力を発達させることが大切です。こどもたちは好奇心全ての事柄に、興味を持たせ、徐々に「真実なるもの」を発見させるようにすることが、私達の第一の役目なのです。

生きていく過程、人生の学習において、身体的な感覚こそが第一に重要なのです。彼らの知的活動、 本能的活動の出発点となるのは身体的感覚なのですから。。。

以上が、ダルクローズの言葉です。やはりダルクローズは、リトミックは「音楽を学ぶ」ものとして だけではなく、「音楽を手段とした人間教育」として考えていた事がわかりますね!

それゆえ、時代が変わってもリトミックはその理念を継承され、発展し続けていくのだと思いました。